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日本人の幸福感調査でウェルビーイングがわかる!
日本人とウェルビーイングについて
今回は、平成24年に内閣府が行った「生活の質に関する調査」に基づいて、
日本人の幸福感やその源(Happiness Resources)について知りましょう!
今回は報告書の7ページまでのグラフを解説しながら、
世界のウェルビーイング研究について触れていきたいと思います。
日本人の幸福を10点満点で評価すると平均6.6点
日本人に、幸福感を0点から10点で評価するように聞いたところ、平均で6.6点でした。(SD2.1)
これは平成23年、平成22年に実施された国民生活選好度調査とほぼ同様でした。
また、幸福感の分布は5点及び8点が多く、全体的にグラフは右よりでした。
とても不幸(0点)よりもとても幸せ(10点)の人のほうが多いんですね。
年齢別の幸福感で言えば、10代が最も高く、50代が最低となっています。
ちなみに後述する欧米24カ国を対象にした調査においても、
報告されている幸福は年令とともに低下するという明確な証拠があります。
他の研究でもU字型の関係が観察されています。[1]Hayo, Bernd, and Wolfgang Seifert. “Subjective economic well-being in Eastern Europe.” Journal of Economic Psychology 24.3 (2003): 329-348.[2]Christoph, Bernhard, and Heinz-Herbert Noll. “Subjective well-being in the European Union during the 90s.” European welfare production. Springer, Dordrecht, 2003. 197-222.
社会調査データからも心理学における中年の危機というのは、
この時期の幸福度の低下を指していると示唆されます。
結婚すると幸福感は高まる?
30代の幸福感は10代に続いて高いという結果が出ていますが、
報告書によると結婚をきっかけとして有配偶者比率の上昇が影響していると考えられます。
この結果からは、結婚は一般的に幸福感を高めると考えることが妥当ですが、
掘り下げると、実は結婚以外のパートナーシップタイプが社会で認められているか否かと、
重大な相互作用があることが分かっています。[3]Vanassche, Sofie, Gray Swicegood, and Koen Matthijs. “Marriage and children as a key to happiness? Cross-national differences in the effects of marital status and children on … Continue reading
この表を見てください。この表は研究対象国の結婚に関する考えについてまとめた表で、
右に行けば行くほど結婚以外の家族タイプに対する反対の割合が多い国になっています。
結婚以外の家族タイプとしては、フランスのパートナーシップ制度が有名ですが、
他にもデンマークやオーストリア、スウェーデン、西ドイツ、スペイン、
ベルギー(フランドル地方)、ニース地方などでは、
結婚以外の家族タイプに対する反対があまりない国や地方だと言えます。
逆にスロバキアや米国、オーストラリア、ラトビア、ロシア、ポーランドなどでは、
結婚以外の家族タイプに対する反対は多く、結婚を重要だとみなす割合も高めです。
パートナーシップのタイプに対する態度尺度で1単位高いスコアを付けると、
つまり、結婚制度を重要だと考えるポイントが1ポイント増えると、
女性の幸福尺度に対する結婚の影響は0.223増加します。
一方で同じ場合の男性の幸福尺度は影響を与えません。
科学的ではないコメントですが、男性は結婚制度が重要だと分かっていても、
あまり幸福度が増えないというのはちょっとかわいそうですね。
逆に結婚以外の家族タイプが比較的高い承認を得ている国では、
幸福に対する結婚の影響はわずかであることが分かっています。
つまり、「結婚」そのものが幸福度につながるかどうかと言うのは、
その国が「結婚をどれほど重要視しているか」と密接に関係しているということです。
結婚以外のパートナーシップが認められている場合においては、
必ずしも結婚が幸福度を高めるというわけではないということがわかります。
就業状態に伴う本人収入が幸福感に影響する可能性
次に表3「就業状態別の現在の幸福感、年齢、年収(指数)」を見てみましょう。
ここでは「仕事をしていた人」「仕事をしていない人」に分けて、
その幸福度と収入との関係を見ています。
幸福感の列を見ていくと、まず「臨時・日雇」の幸福感が低いことがわかります。
次に低いのは「自営業主」で、その次が「常用雇用」、最も高いのは「会社役員」です。
「臨時・日雇」には契約社員や日雇い労働者が該当すると考えられます。
彼らの本人収入は1.8と低く、世帯収入も同様に低いのが特徴です。
本人収入と現在の幸福感には相関関係が見られます。
以下のグラフでは本人収入(指数)を縦軸に、現在の幸福感を横軸にプロットしました。
就業状態が「臨時・日雇」で本人収入が低いことが幸福感の低下につながるかというと、
あくまで「働いている人」を対象にした場合に幸福感が低いことを指しています。
「仕事をしていなかった人の幸福感」はどうなのでしょうか。
仕事をしていた人の状況で一番幸福感が高いのは「仕事を休んでいた」人でした。
次に高いのは「通学」、「家事」、「仕事を探していた人」はワーストの5.2です。
仕事を休んでいる人は、病気や介護、子育てなど何らかの事情があって仕事を休んでいるものだと考えられ、本人収入は低いですが総じて幸福感は高いようです。
それでも、「臨時・日雇」の本人収入と比較すると高いことから、常用雇用されている人が一時的に仕事を休んでいる状態を指しているのではないでしょうか。
家事従事者は本人収入は著しく低いですが、幸福度は高いですね。
結婚して家事に専念している状態ですので結婚の幸福度と合わせて高いようです。
「仕事を探していた人」は今回の調査で最も幸福度が低い状態であることがわかります。
本人収入も当然低く、生活に困窮していることが幸福度を著しく下げることがわかります。
満足感と幸福感は違う?
別の研究では、満足度より幸福度のほうが若干高くなることが知られており、
幸福感は教育達成によって、満足度は職業達成と収入に影響されることが分かっています。
幸福感と満足度は異なる規定要因をもった別の意識である可能性が示唆されています。[4]小林盾, ホメリヒ,カローラ, and 見田朱子. “なぜ幸福と満足は一致しないのか: 社会意識への合理的選択アプローチ.” (2015).
教育達成とは、いちど入手すれば変動すること無く生涯失わない達成です。
そのため、長期的ウェルビーイングである幸福感に影響しやすいと考えられます。
一方で、職業達成は短期的変動を余儀なくされる可能性があります
そのため、職業達成と収入は短期的ウェルビーイングである満足度に影響を与えやすいのです。
幸福感を「結婚と就業状態」から分析してみたところ
今回は、日本人の平均的な幸福度について、そして結婚や就業状態と幸福度がどのように関係しているのかについて調べていきました。
その結果、以下の事実が明らかになりましたね。
- 日本人の幸福感は5点、8点をつける人が多い(平均6.6点)
- 幸福感は10代が最も高く段々と下がるが、30代ですこし幸福感が増える
- 未婚や離婚の人より結婚している人のほうが幸福感は高い
- 結婚以外の家族のカタチが認められていると結婚が必ずしも幸福感には結びつかなくなる
- 本人収入と幸福度は相関関係がある
- 「仕事を探していた人」「臨時・日雇」の人は幸福度が低い
一般的にワーキングプアとされる、独身の臨時・日雇労働者は幸福感が低いでしょう。
一方で専業主婦や休職ができる企業に努めている人は幸福感が高いです。
結論として、生活に困窮することで幸福感は下がり、
また親しい人、愛する人がいない場合も幸福感が下がります。
結論は容易に想定できるものですがデータとして改めて示されると、
実際に幸福感を感じられていない人の生活状況がより具体的にイメージできますね。
今後もこの報告書を読んでいきたいと思っています!
References
↑1 | Hayo, Bernd, and Wolfgang Seifert. “Subjective economic well-being in Eastern Europe.” Journal of Economic Psychology 24.3 (2003): 329-348. |
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↑2 | Christoph, Bernhard, and Heinz-Herbert Noll. “Subjective well-being in the European Union during the 90s.” European welfare production. Springer, Dordrecht, 2003. 197-222. |
↑3 | Vanassche, Sofie, Gray Swicegood, and Koen Matthijs. “Marriage and children as a key to happiness? Cross-national differences in the effects of marital status and children on well-being.” Journal of Happiness Studies 14.2 (2013): 501-524. |
↑4 | 小林盾, ホメリヒ,カローラ, and 見田朱子. “なぜ幸福と満足は一致しないのか: 社会意識への合理的選択アプローチ.” (2015). |