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人工甘味料の危険性について知っておきたいこと

読者対象
  • 人工甘味料の危険性について気になっている人
  • スクラロースの科学的な危険性評価
  • 砂糖の代わりに人工甘味料を使う効果について知りたい人

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人工甘味料の危険性評価について客観的に知るために

私は今、ダイエットをしています。

食事制限をしながら筋力トレーニングを行いプロテインを摂取しています。こうした生活はストイックですが運動した後はスッキリとしますよね。

最近のプロテインはとても甘いのですがカロリーはとても抑えられています。なぜなら人工甘味料が添加されているからです。他にもダイエットコーラなど人工甘味料が多く含まれている飲料はたくさんありますよね。

しかし、インターネットで「人工甘味料」について調べてみると「危険性」を主張しているサイトは多いもののあまり客観的な科学的根拠があるものがありませんでした。

そこで、今回、スマウェル編集部は「なぜ人工甘味料が危険だと言われているのか?」についてリサーチしました。

人工甘味料が危険だと主張する理由

  • 自然に存在しない物質だから
  • スクラロースなどはCl(塩化物)が含まれている有機塩素化合物だから
  • 医学や栄養学にまだわからない点や見解が異なるから
  • 健康とライフスタイルに対する価値観から

多くの主張は上記の根拠に基づいています。しかし、その根拠としてあげられている論文までちゃんと参照しているサイトは殆どありません。

また、科学の見方、食事スタイルや主義などと関係してくる問題であるため、あまり客観的なデータや解釈まで踏み込んで情報提供している情報源は多くないようです。

厚生労働省なども情報発信はしているものの、「安全です」という結果のみを公表するだけですので消費者としての納得感はあまり高くないということも関係しているでしょう。

厚生労働省 e-ヘルスネット「代用甘味料の利用法」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-013.html 

人工甘味料の化学物質は確かに自然には存在しないけれど

確かに人工甘味料反対派の方々が主張するように人工甘味料は自然にはない化学物質です

スクロース(ショ糖)のような自然から採れる甘みではないのでなんとなく嫌悪感を感じてしまうという方もいるでしょう。私もそうですし、人間として正直に感じる不安だと思います。

一部の人からは「自然由来でないからだめ」という意見もあります。

しかし、それはちょっと無理矢理過ぎると思います。例えば、芥子の実から取れる成分を濃縮したヘロインが身体に良いのかというと必ずしもそうではないですし、毒キノコや毒を持つ魚を食べることが自然由来だから良いというわけでもないことくらいは、化学の知識がなかった昔の人も経験から学んで生き延びてきました。

自然の力と人間の知恵によって健康に良いとされる物質ができることもあります。納豆は自然には作られませんが人間が大豆と納豆菌を組み合わせ、発酵させることで血液をサラサラにすると言われるナットウキナーゼが生まれます。こうした知恵は自然と人工のコラボレーションだと言えます。

つまり、最初から自然に存在しないものが健康に悪いとは言えません。

自然に存在している物質でも人間の生命を脅かすような効果を持っているものも多くあるのは当然ですし、少量であれば必要であるけれども大量に摂取すると良くないという化学物質もあります。自然由来だからOK、人工的だからダメというのは無理な主張です。

スクラロースは有機塩素化合物だから危険?

「有機塩素化合物は危険」という主張も良くみられます。確かに多くの有機塩素化合物は人体に毒性があることが多いのは事実ですが、それがスクラロースにも同じことが言えるのかということについてはどうなのでしょうか。

この話は高校までの化学一般の話と、もう少し先の大学レベルの有機化学や薬学、薬理学、ホルモンといった話になります。

まず科学の初歩からちょっと説明してくと、有機化合物は皆さんの栄養源である、脂質、タンパク質、炭水化物などすべてが該当します。DNAというのは核酸という化学物質ですし、ビタミンCはL-アスコルビン酸という化学物質です。

そこで、「核酸やL-アスコルビン酸は酸性の有機化合物だから人体に悪影響」という主張をみたらどう思いますか?なんとなく難しいので確かにそう言われると悪いような気がします。しかし、今自分の体の中にある有機化合物の名前をあげているだけに過ぎません。

次に、有機塩素化合物についてちょっと触れていきます。

有機塩素化合物とは有機化合物に塩素原子が付いているものの総称です。消毒などに用いられるのは塩素です。それではClが付いているから人体に害があるのかと言うと必ずしもそうではありません。

例えば無機化合物ですが、NaClは塩化物である「塩化ナトリウム」ですがこれは「食塩」です。ナトリウムイオンと塩化物イオンがくっつくと塩になります。塩は地球上の生物の大半にとって生きていくのに必要な物質です。

塩化ナトリウムの場合、体内ではナトリウムイオン(+)と塩化物イオン(−)に分かれます。この塩化物イオンは胃酸のもとになって食べ物の分解や殺菌に使われますし、もう片方のナトリウムイオンは栄養を吸収する際にくっつきます。

これらは生命維持に必要だからこそ動物も岩塩をなめたりして摂取するわけで、よく言われているように塩分のとりすぎが健康に良くないのであって、塩を取らないほうが健康に良いということは間違いなくありません。

また、有機塩素化合物は本当に自然界に存在しないのでしょうか。

確かに自然界にはあまり大量にはみられませんが、有機化合物は生物を構成する化学物質ですし、塩素原子自体も食塩などの中に含まれます。そうするとなんらかのエネルギーが加われば有機塩素化合物も自然に作られている可能性は高いと言えます。

実はそのとおりで生体の中で生成される物質の中にはごく少数ではあるものの、塩素化合物が含まれることはあります。例えばエンドウマメやソラマメは天然の塩素化植物ホルモンである4-クロロインドール-3-酢酸 (4-Cl-IAA) などが挙げられます。

それでもなぜ有機塩素化合物がそこまで恐れられるのかと言うと、同様に有機塩素化合物とされるダイオキシンやDDT (ジクロロジフェニルトリクロロメタン)などの化学物質が発がん性を持っていたり、人体に蓄積しやすい有害な物質というイメージがあるからです。

それでは、同じ有機塩素化合物でもダイオキシンとスクラロースでは何が違うのかについて説明しなければなりません。それでは次になぜ人工甘味料は安全だと言われているのかについてご紹介します。

なぜ人工甘味料は安全だと言われているのか?

  • 基本的に体内に吸収されない
  • 短期的に明らかな副作用などの問題が認識されない
  • 発がん性など病気の原因としても特定されていない

先程、有機塩素化合物であるスクラロースを取り上げましたが、これらの物質とスクラロースの構造はまた異なります。これは、内閣府食品安全委員会が開催した「食品を科学する リスクアナリシス(分析)連続講座」のなかでも触れられています。

質問2: 有機ハロゲン化合物が安定という話があったが、ダイエットブームでスクロースの 代わりにスクラロースが使われているが、スクラロースは、Cl(塩素)が入っていると いうことでスクロースより安定だというデータとがあるのか。

回答2: さきほど申し上げたハロゲン化合物というのは物質全体が数多くのハロゲン原子の鎧をかぶっているような感じのもので、私たちの体に入っている代謝酵素が跳ね返されるものはいわゆる難代謝性のハロゲン化合物で POPs と呼ばれるもの。

スクラロースのようにハロゲンが少し入ったものは実際には生体の中にもある。 また、医薬品等でもある。ましてや、糖の場合にはほかのアタックする場所がありますので、それの処理をする能力というものとしては、Cl が少し入っていてもそんな に大きく変わるものではないと思う。それは分子全体としての極性と、それの分解されやすさというもので効いてくるのだと理解をしていただければよい。

回答の中で触れられている難代謝性のハロゲン化合物(POPs)の代表的な化学物質としてはダイオキシンやDTTが該当します。これらは特に脂肪に溶けやすく、主に食品から摂取し、消化器官から体内に吸収されるとされています。

一方で、クラロースはもともとはショ糖から合成されたという由来でありながら炭水化物を含まないため、体内では分解されないという性質を持っています。

また塩素原子を持っていますが生体の中にもこの塩素原子を含んだものは存在するのは先程、そら豆の成長ホルモンでも触れましたね。また医薬品にも含まれることがあります。

それではスクラロースが体内に蓄積されず、ちゃんと排出されるのかという点について疑問に思うかもしれません。人工甘味料についての研究は完全ではないものの、様々な実験がされておりそのうちの一つをご紹介します。

今日の論文

Sims, J., et al. “The metabolic fate of sucralose in rats.” Food and chemical Toxicology 38 (2000): 115-121.

スクラロースが生体の中でどれくらい吸収されるかを2〜1000  mg / kgの単回静脈内または経口投与後のラットで調べました。静脈内投与(2〜20  mg / kg)後、用量の約80%が尿中に排泄され9〜16%が糞便中に排泄されました。

これはスクラロースが腸管からの吸収があまり行われないことを示します。なお18ヶ月以上高濃度のスクラロース(3%)を食餌中に与えられたラットにおいても同様だったと報告されています。

このようにスクラロースが生体では吸収されにくい物質であることが確かめられています。ダイオキシンなどとは違った物質特性を持っているということが分かります。

原子に塩素が含まれている有機塩素化合物だからといって生物に悪影響のあるその他のハロゲン化合物とはまた違った特性を持っていることが分かりました。

人工甘味料が人体に悪影響を与える根拠はあるの?

これまで人工甘味料、主にスクラロースについての研究や考え方をご紹介してきましたが、人工甘味料には他にも複数の種類があり、様々な角度から検証されているものの、科学者の間で健康への影響について合意されている結果はでていません。

現時点では人工甘味料に含まれるポリオールという構造を持つものについては、使用することで胃腸の不快感を感じるという指摘がされています。具体的に腸内細菌叢を変化させるということがわかっているのはサッカリンとスクラロースのみです。

今日の論文

Kroger, Manfred, Kathleen Meister, and Ruth Kava. “Low‐calorie sweeteners and other sugar substitutes: a review of the safety issues.” Comprehensive reviews in food science and food safety5.2 (2006): 35-47.

合成甘味料を避けるべき人は?

フェニルケトン尿症(PKU)、これはまれな遺伝性疾患ですが、この病気をもつ消費者は、フェニルアラニン、アスパルテームの成分を代謝することが難しいことがわかっています。

そのためPKUを患う消費者はそのような製品のラベルを見ることによってアスパルテームを含んでいる食品を避けた方が無難です。

人工甘味料と健康について

とりあえず人工甘味料の危険性を不安視する必要はない

現在、食品に含まれている人工甘味料は、多くの世界中の研究者等による実験や研究をレビューすることで人体に害がないと考えられるものの使用を許可しています。

確実に悪影響があるもしくは悪影響がある可能性があればそれらの使用は中止されますので、今すぐになんらかのアクションを起こす必要はありません。

医学や栄養学は複雑な人体に関する学問であり、どの要素がどれだけその結果に影響を与えているのかを定量的に把握することは極めて難しいです。風が吹けば桶屋が儲かることもあるかもしれませんが、そんなことが起きる可能性は低いですよね。

しかし、科学においては「その可能性がどのくらいなのか」に注目するため、必ずしもあなたや子供、隣のおじさんのように特定個人が同じような結果が出ることを保証しません。生活習慣や運動習慣、遺伝や栄養、ストレスなど様々な要因が複雑に関係するがゆえに確実なことは言えないのです。

日本人の人工甘味料の消費量は少ない

一言に人工甘味料の良し悪しの話をしてしまいましたが、実際はもしその化学物質になんらかの影響があるとしても、その摂取量によって影響は当然変わってくることが一般的です。

そこで日本人の人工甘味料摂取量を調べてみました。厚生労働省の資料によると日本人は1日に1.357mgのアセスルファムカリウムと0.825mgのスクラロースを摂取しているということです。

「いや、人工甘味料なんて取ってる覚えないよ」

という方もいるかも知れませんが、調味料やカロリーオフの食品にはこうした人工甘味料が使われて加工がされていることが多いため知らない内に摂取しています

人工甘味料と健康に関するレビューは日本だけではなく、米国でも盛んに行われており現在のところ使われている人工甘味料の多くは健康に害を及ぼす物質ではないとされています。

例えばアメリカ食品医薬品局(FDA)では代表的な人工甘味料であるスクラロースの1日あたりの摂取量として5mg/ kg日でも十分安全の範囲内としています。体重60キロの人であれば300mg、つまり3グラム摂取しても安全です。

日本人はそもそも人工甘味料の摂取量が少ないということで、もし何らかの影響があるという結果になったとしてもそれが大きな健康上のリスクファクターになるということは考えにくいということになるでしょう。

日本人の摂取量が多い人工甘味料(FDAの解説翻訳)

アセスルファムカリウム

アセスルファムカリウムは、食品への使用が承認されています。食品ラベルの成分リストには、アセスルファムK、アセスルファムカリウム、またはAce-Kとして記載されます。

アセスルファムカリウムは、Sunett®およびSweetOne®の商品名で販売されています。それは砂糖よりも約200倍甘く、そして他の甘味料と組み合わされることが多いとされます。

FDAは、1988年にアセスルファムカリウムを特定の飲食品カテゴリーに使用することを承認し(53 FR 28379)、2003年には特定の使用条件下で、食肉および家禽以外の汎用甘味料および風味増強剤として承認しました。

特徴としては高い熱安定性であり、それは焼成中の高温で使用された場合でもそれが甘味を保つことを意味するため、焼成品の砂糖代用品として適しています。

アセスルファムカリウムは、通常、冷凍デザート、キャンディー、飲料、および焼き菓子に使用されます。90以上の研究がその安全性を支持しています。

スクラロース

スクラロースは食品に使用することが承認されています。スクラロースはSplenda(登録商標)の商品名で販売されている。スクラロースは砂糖よりも約600倍甘いです。

FDAは、1998年にスクラロースを15の食品カテゴリーで使用することを承認し、1999年には特定の使用条件下で食品用の汎用甘味料として使用することを承認しました。

スクラロースは、焼き菓子、飲料、チューインガム、ゼラチン、および冷凍乳製品デザートを含む様々な食品に見られる汎用甘味料です。こちらも熱安定性を持っており、焼成中の高温で使用可能です。

スクラロースは広く研究されており、食品用の汎用甘味料としてのスクラロースの使用を承認するにあたり、110以上の安全性研究がFDAによってレビューされています。

人工甘味料の論文レビューを通して

わたしたち人間は自然にはそのままでは存在しなかった物質を様々に加工して日々の生活を行っています。医薬品の多くは当然人工的に精製されますし、鉄やカーボンなどの生活をささえる物質も人間の知恵によって実用化されています。

現代に生きる我々は少なからずこれらの科学技術の恩恵を受けざるを得ないわけで、人工的に作られたものがすべて悪いと捉えるよりも、「なぜ人工的に作られたものが普及しているのか」を考えたとき、私達の欲望や幸福追求と密接に関係していることに気付かされます。

遺伝子組み換え作物も誤解の多い科学技術であるのと同様に、私達が注意を払うべきは実は私達自身の自分勝手な価値観やライフスタイルであって、科学技術ではないことに注意すべきかもしれません。

そしてできる限り科学的に人々を煽ることなく、すべての人が自分で判断して幸せを手に入れるために正しい情報を発見、研究することが研究者の役割であり、私達はなんとかこれらの研究を理解する努力をすべきでしょう。

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