現時点で学術的に評価可能な研究はありません。
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カラハリスイカとは何?
アフリカのカラハリ砂漠に自生する野生のスイカ
アフリカのカラハリ地方(砂漠という意味)に自生しているスイカが、
「カラハリスイカ」呼ばれています。
これまでに研究されていない野生の食材として有用性が研究されています。
現地では飲み物、食べ物、そして時には体を洗うために使われています。
そう考えると、スイカやメロンというのは多肉植物に近いですよね。
成分分析によるとアミノ酸の一種シトルリンが豊富
砂漠は乾燥地域だけあって干ばつが非常に頻繁に起こります。
この野生のスイカは研究によると、8日間の干ばつが続くと、
中のシトルリンというアミノ酸含有量が増える性質があることが分かっています。
明石欣也「砂漠に生きる野生植物:有用遺伝子資源の探索と利用」より引用[1]http://www.science-plaza.or.jp/about/sankangaku/forum21/Akashi.pdf
赤色のグラフ部分が「シトルリン」、緑のグラフ部分が「アルギニン」、
水色のグラフ部分が「グルタメート」オレンジのグラフ部分が「グルタミン」です。
カラハリスイカに含まれるアミノ酸の効果
シトルリンとは
干ばつ中にカラハリスイカに特に多く含まれる「シトルリン」とは何でしょうか。
シトルリン自体は一般的なスイカにも含まれるアミノ酸で、
「シトルリン−アルギニン回路」という尿素サイクルで重要な役割を果たします。
一般的にはアルギニンの反応物質として生成されるアミノ酸がシトルリンです。
林登志雄「動脈硬化症とアルギニン,シトルリン」より引用[2]http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2015/01/86-03-08.pdf
シトルリン自体はタンパク質に含まれない「遊離アミノ酸」と呼ばれる、
細胞内や血液中に存在するアミノ酸です。
肉や魚には含まれず、スイカのようなウリ科の植物に含まれます。
グルタミン酸?GlutamateとGlutamineの違いは何?
先程のグラフで「Glutamate(グルタメート)」と、
「Glutamine(グルタミン酸)が出てきました。
この2つのアミノ酸の違いはなんだろうと思っていました。
調べてみたところ、「グルタミン(glutamine)はグルタミナーゼによって、
脱アミド化が行われγアミノ酪酸の前駆体としてグルタメート(こちらがいわゆるグルタミン酸、glutamate)を作り出す」ということです。
前駆体とはその物質が生成する前の段階の物質のことを指します。
γアミノ酪酸は抑制性の神経伝達物質として機能する作用を持っています。
なお、グルタミン酸のナトリウム塩であるグルタミン酸ナトリウムは、
皆さんおなじみ味の素の調味料(うま味調味料)の主成分です。[3]Tapiero, H., et al. “II. Glutamine and glutamate.” Biomedicine & pharmacotherapy 56.9 (2002): 446-457.
ちなみにγアミノ酪酸は通称「GABA」と呼ばれます。
コンビニなどでおなじみストレス緩和に効果があるとされている物質です。
カラハリスイカはなぜ健康食品なの?
シトルリンが多く含まれアスリートサポートに有益か
カラハリスイカに含まれているシトルリンの臨床的な効果はまだ十分にされていません。厚生労働省の「健康食品」の素材情報データベースによると、シトルリンは、
「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」
とされています。[4]厚生労働省 「健康食品」の素材情報データベース シトルリンhttps://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail1122.html
ラットによる実験ではシトルリンを配合した食事を投与したところ、
筋肉のタンパク質合成を刺激し、筋肉のタンパク質量を増大したと報告されています。[5]Moinard, Christophe, and Luc Cynober. “Citrulline: a new player in the control of nitrogen homeostasis.” The Journal of nutrition137.6 (2007): 1621S-1625S.
疾病のない、疲労の自覚がある男性18名 (平均31.1±9.2歳、フランス) を対象とした試験において、非摂取時と比較して休憩・運動・回復形式テストにおける運動中の酸化ATP生成の増加、運動後のホスホクレアチンの回復増加がみられたという予備的報告があります。[6]Moinard, C., et al. “Dose-ranging effects of citrulline administration on plasma amino acids and hormonal patterns in healthy subjects: the Citrudose pharmacokinetic study.” British … Continue reading
また、学会報告レベルではありますが協和発酵バイオの研究によって、
シトルリン摂取によりプラセボ摂取時に比べ、走破時間が有意に短縮されたとしています。
また、血中のアミノ酸濃度に関してシトルリン及びアルギニン濃度が有意に増加していた。
また、分岐鎖アミノ酸 (BCAA) 濃度は有意に低下したと報告されています。[7]協和発酵バイオ株式会社 ニュースリリース http://www.kyowahakko-bio.co.jp/news/20160905.html
一方で、高血圧など循環器疾患に関する効果はほとんど明らかになっていません。
現時点では効果のあるといえるほどの効果はなさそうです。[8]Figueroa, Arturo, et al. “Oral L-citrulline supplementation attenuates blood pressure response to cold pressor test in young men.” American journal of hypertension 23.1 (2010): 12-16.
また、がんや糖尿病、肥満に対する効果もほとんど分かっていません。
例えば「カラハリスイカが高血圧を防ぐ」といった報告はされてはいるものの、
ラットによる実験であり、学術的に検査もされていないため信用性は高くありません。[9]ユーグレナヘルスケアラボ「カラハリスイカ果汁が高血圧症状を低減 することが示唆されました。 … Continue reading
アルギニンの効果についてはかなり研究されている
厚生労働省の「健康食品」の素材情報データベースによると、アルギニンは、
アルギニンを主要成分とした輸液が術後の回復を助け、感染性合併症の発生率低下に利用されている。また、狭心症、末梢血管疾患、間質性膀胱炎の症状改善などに有効性が示唆されている。
とされています。[10]厚生労働省 「健康食品」の素材情報データベース アルギニンhttps://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail601.html
血管や血圧への効果として多くの研究がされており、
二重盲検無作為化プラセボ比較試験11報へのメタ分析において、
アルギニンの摂取が拡張期および収縮期血圧の低下と関連が認められました。[11]Dong, Jia-Yi, et al. “Effect of oral L-arginine supplementation on blood pressure: a meta-analysis of randomized, double-blind, placebo-controlled trials.” American heart journal 162.6 … Continue reading
一方で、妊娠高血圧症候群の妊婦に対するアルギニンの投与に関するメタ分析では、
収縮期血圧に影響を与えなかったという結果が出されています。[12]Gui, Shunping, et al. “Arginine supplementation for improving maternal and neonatal outcomes in hypertensive disorder of pregnancy: a systematic review.” Journal of the … Continue reading
アルギニンの血圧の低下作用は、対象となる高血圧症状のある患者によって、
その効果が異なる可能性があります。科学的にはまだ研究が必要です。
他には、早産児における壊死性大腸炎の予防効果、
術後回復の早期化やHIV患者における衰弱等、免疫系に対する効果が示唆されています。
勃起不全に対しては自覚的に改善したとの報告はあるものの、
混合型の勃起不全には効果がなかったという報告もあり、現時点では、
効果としては期待できないと考えて良いでしょう。[13]Klotz, T., et al. “Effectiveness of oral L-arginine in first-line treatment of erectile dysfunction in a controlled crossover study.” Urologia internationalis 63.4 (1999): 220-223.
スポーツ関連で有効という科学的な報告は少ないです。
詳しくはこちらから根拠となる科学論文をお読みください。
GABAには血圧低下の効果があると考えられる?
またカラハリスイカに含まれているグルタミン酸は、体内でGABA(γアミノ酪酸)となります。厚生労働省の「健康食品」の素材情報データベースによると、
「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」
「GABAを関与成分とし、『血圧が高めの方に適する』保健用途の表示ができる特定保健用食品が許可されている」
とされています。[14]厚生労働省 「健康食品」の素材情報データベース γ-アミノ酪酸(ギャバ)https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail14.html
確かに、様々な世界の研究において「二重盲検無作為化プラセボ比較試験」という、
科学的には信頼度が高いとされる実験計画に基づいた調査結果でも、
その結論にブレはありますが多くは血圧低下の効果がみられたとされています。
研究の中には効果が認められなかったものもあるため注意は必要です。
こちらに研究がまとめられていますのでご興味のある方はぜひ論文をお読みください。
研究によって、実験参加者も様々で、与えられたものもかぼちゃ加工品(20mg)や、
GABAそのもの400mg、減塩醤油(GABA120mg)、緑茶飲料(GABA20mg)など、
そして実験期間も様々ですが、総じて結果としてはそのような効果があるとされます。
カラハリスイカとその栄養素の効果について
まとめ:シトルリンってそんな摂取してましたっけ?
カラハリスイカには「シトルリン」「アルギニン」「グルタミン」のアミノ酸が、
豊富に含まれていることが分かっています。
これらのアミノ酸の科学的な効果については、まだ分かっていない点も多いものの、
一部のアミノ酸については特定の疾病に対して効果が認められる場合もあるようです。
なお、カラハリスイカに多く含まれているシトルリンは、ウリ科の植物に含まれており、
カラハリスイカに限らず、スイカ、メロン、冬瓜、キュウリ、ニガウリ、ヘチマ、
クコの実、にんにくなどにも含まれています。
1日の摂取量の目安は800mgとされていますが、スイカ1/7個など毎日は食べません。
摂取しなかった場合の負の効果は不明であり、気にしすぎる方が良くないかもしれません。
林登志雄「動脈硬化症とアルギニン,シトルリン」より引用
スイカはGI値が高いけど実際の影響はそうでもない
余談にはなりますが、今回シトルリンが豊富に含まれている「スイカ」。
実は「スイカはGI値が高い」ということで一部血糖値を気にされている方もいるかもしれませんが、実際に食べる量を考えれば臨床的には影響は大きくはありません。
GL値は食品100g中に含まれる糖質量にGI値を掛け、100で割った「GL値」で見れば、
スイカを食べるよりジュースを飲んだほうがよっぽど影響が大きいことがわかります。
なお、GI値は「70以上を高い」としていましたが、
GL値の場合「20以上を高い」と判断します。
Tarzan 「血糖値コントロールの新指針・GL値って、いったい何?」より引用[15]https://tarzanweb.jp/post-176786
References
↑1 | http://www.science-plaza.or.jp/about/sankangaku/forum21/Akashi.pdf |
---|---|
↑2 | http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2015/01/86-03-08.pdf |
↑3 | Tapiero, H., et al. “II. Glutamine and glutamate.” Biomedicine & pharmacotherapy 56.9 (2002): 446-457. |
↑4 | 厚生労働省 「健康食品」の素材情報データベース シトルリンhttps://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail1122.html |
↑5 | Moinard, Christophe, and Luc Cynober. “Citrulline: a new player in the control of nitrogen homeostasis.” The Journal of nutrition137.6 (2007): 1621S-1625S. |
↑6 | Moinard, C., et al. “Dose-ranging effects of citrulline administration on plasma amino acids and hormonal patterns in healthy subjects: the Citrudose pharmacokinetic study.” British journal of nutrition 99.4 (2008): 855-862. |
↑7 | 協和発酵バイオ株式会社 ニュースリリース http://www.kyowahakko-bio.co.jp/news/20160905.html |
↑8 | Figueroa, Arturo, et al. “Oral L-citrulline supplementation attenuates blood pressure response to cold pressor test in young men.” American journal of hypertension 23.1 (2010): 12-16. |
↑9 | ユーグレナヘルスケアラボ「カラハリスイカ果汁が高血圧症状を低減 することが示唆されました。 (ラットによる試験)」https://www.euglab.jp/kalahari_suika/report/detail/000073.html |
↑10 | 厚生労働省 「健康食品」の素材情報データベース アルギニンhttps://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail601.html |
↑11 | Dong, Jia-Yi, et al. “Effect of oral L-arginine supplementation on blood pressure: a meta-analysis of randomized, double-blind, placebo-controlled trials.” American heart journal 162.6 (2011): 959-965. |
↑12 | Gui, Shunping, et al. “Arginine supplementation for improving maternal and neonatal outcomes in hypertensive disorder of pregnancy: a systematic review.” Journal of the Renin-Angiotensin-Aldosterone System 15.1 (2014): 88-96. |
↑13 | Klotz, T., et al. “Effectiveness of oral L-arginine in first-line treatment of erectile dysfunction in a controlled crossover study.” Urologia internationalis 63.4 (1999): 220-223. |
↑14 | 厚生労働省 「健康食品」の素材情報データベース γ-アミノ酪酸(ギャバ)https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail14.html |
↑15 | https://tarzanweb.jp/post-176786 |