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コレステロールとは実は体に必要な物質
体に必要なコレステロール、実は上限は撤廃されている!
「卵は1日1個」「甲殻類は控えなさい」
お医者さんからこんなことを言われた人は少なくないと思います。しかし、これは2019年時点での健康科学では重視されていないと言うことはご存知でしょうか。
最新の研究によるとコレステロールを多く含む食事をしても、血中コレステロール値が上昇するという証拠はないということが分かっています。日本でも2015年に厚生労働省は食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃しています。
コレステロールというと「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)」の値を気にしている人が多いと思いますが、コレステロールは肝臓で作られている物質であり、食事から摂取するコレステロールは20%~30%程度と言われています。
このコレステロールの役割は、細胞を作ったり、内分泌の元になる物質だということです。
人間の細胞は3ヶ月ですべて交換されると言いますが、この細胞をつくる細胞膜やホルモンの材料になる栄養物質なので絶対に必要なのです。
ただ、なぜそこまで「コレステロール値」の話が出てくるのかと言うと、食習慣の乱れや食事を抜くことでコレステロール値が低すぎたり、高すぎたりすると余分に血管に沈着してしまい動脈硬化など別の病気につながる可能性があるからなのです。
もっと詳しく知りたい方はオムロンヘルスケアのページがとても参考になります。
植物性タンパク質がLDLコレステロールを減少させる?
コレステロール管理には植物性タンパク質が良いという話を聞いたことがありませんか?
福岡県薬剤師協会のページでは以下のような記載がされています。
豆乳の原料の大豆は、タンパク質約40%、脂質約20%、ダイジンやゲニスチン等のイソフラボン類、サポニン、植物ステロール等を含む。これまで大豆タンパク質による血清コレステロール低下作用(総コレステロール、LDL、中性脂肪を下げ、HDLには影響しない)が多数報告されており、コレステロールが高めの方に適する食品として、大豆タンパク質を含有した特定保健用食品(調整豆乳等)が市販されている。
この仕組みはどうなっているのでしょう?
大豆タンパク質の未消化画分(未消化の部分)が胆汁酸と結合して排出されるため、胆汁酸の働きが抑制され、肝臓コレステロールの胆汁酸への異化(変わること)が進むことで、肝臓で作られるコレステロール受容体の活性が進み、血中のLDLコレステロール粒子の取り込みが進み、コレステロールが低下すると説明されています。
参照:不二製油株式会社
なるほど。生化学的にある程度仮説が立てられているようですね。しかし、実際問題どれくらい効果があるのかについては様々な主張があります。
今の所、植物性蛋白質のコレステロール低下効果はFDAで認められている
アメリカの米国食品医薬品局(FDA)で認められた効果として、特定の植物性食品(ナッツおよび大豆タンパク質)および食品成分(粘性繊維および植物ステロール)は、それらのコレステロール低下能力に基づいて心臓の健康を促すことをFDAは許可しています。
また日本でも豆乳をお求めになる際には「特定保健用食品」の認定を得ている商品もあります。米国と同様血清コレステロール値を低下させる働きがあると認められているわけです。
ただ、実はFDAではこの効果に疑問の声が上がっています。
FDAが実施した無作為化対照実験ではこのLDLコレステロールの減少が一貫して観察されなかったというのです。これは2017年10月にFDAから公表された声明でした。
これまでの研究でその効果が認められたはずなのにこうして変わることはよくあります。
先程も取り上げたコレステロール量の制限のように新しい研究によってこれまでの常識が変わってしまうことは普通に起こりえます。果たしてどちらの主張が正しいのでしょうか?
FDAの試験を元に植物性タンパク質効果を分析した結果は?
ジャーナルオブニュートリション誌に掲載された最新の論文
メタアナリシスとは複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析する統計的な手法です。ランダム化比較試験を行ったメタアナリシスは最も精度の高い検証方法とされます。
実際にFDAによって提供された研究結果(46件)を手に入れ再分析した結果、ほとんどの試験(〜75%)でLDLコレステロールの減少(範囲:-0.77〜-58.60 mg / dL)があることが示されました。
未解明点の多い健康食品とコレステロールの関係性
それではなぜFDAはそうは取らなかったのでしょうか。それは個別の研究結果だけを見ると少数の研究のみが統計的に有意だったからではないかと結論づけています。
同じデータを元にしているにもかかわらず、すべての研究を統合して行った分析を再度実施することによってFDAが実施した研究から異なった結論が導かれることがわかります。
結果として大豆タンパク質が成人のLDLおよび総コレステロール濃度を減少させるという主張ですが、果たしてどちらが正しいのでしょうか。
大豆の健康食品としての機能性についてアメリカでも論争を呼ぶ
まずFDAから提供された主張は、大豆タンパク質とLDLコレステロールの関係性に一貫性がないという指摘であり、FDAの厳密な基準に満たしていないという趣旨でした。
主張についてはかなり広い論争を読んでおり850ものコメントが寄せられています。以外にお思うかもしれませんが多くはFDAによる承認の取り消しを支持するものです。
これは利益誘導政治が公に行われるアメリカにおいて、健康食品会社や製薬会社による利益誘導によって認可が取られていたのではないかと考える人が多いからではないかと考えられます。
アメリカではこうした主張はパブリックコメントという形で議論を呼ぶ形にしているところがオープンですよね。ちなみにFDAの主張はこちらから、全国からオンラインや封書で送られたコメントはこちらから読むことができます。
一方で、デュポン社は1998年に行った臨床試験では1日25グラムの大豆タンパク質を摂取した場合に、LDLコレステロールの臨床的に有意な減少をもたらしており、レビュー研究にはこうした過去の研究が適用されていない点を指摘しています。
今回取り上げた論文の筆者がどのような背景なのかは把握していませんが、2019/04/22に発表された最新の研究です。実際にFDAの用いたデータを用いて、再度検証する極めて信頼性の高い方法による反論論文ですので、今後の論争でも中心的に使われていくでしょう。
Blanco Mejia, Sonia, et al. “A Meta-Analysis of 46 Studies Identified by the FDA Demonstrates that Soy Protein Decreases Circulating LDL and Total Cholesterol Concentrations in Adults.” The Journal of Nutrition (2019).