スマートウォッチを用いた脈拍測定は、Apple WatchやFitbitを始めとした多くの有名メーカーから発表されており、多くのウェアラブルデバイス製品に搭載されています。
でも「血圧も測れるの?」そう思うかもしれませんね。
この記事ではスマートウォッチを用いた血圧測定について仕組みから技術、そして最新スマートウォッチまでを全部ご紹介いたします。
- スマートウォッチで血圧を記録したい方
- スマートウォッチで血圧を測れる製品を知りたい方
- ダイオードを用いた血圧測定に関心がある方
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スマートウォッチで血圧測定する仕組み
「スマートウォッチで血圧測定ができるの?」この疑問に一言で答えるとすれば、
「できます、しかし現時点で医療用として使えるレベルの製品は市販されていません」
と答えることが、最も正確な回答になるでしょう。
発光ダイオードと感光性ダイオードで血圧測定する仕組み
原理的にはスマートウォッチのようなものでも血圧測定は可能です。
家電量販店などでは手首につけるタイプの血圧測定器が販売されていますよね。
これらの一般的な血圧計は腕を圧迫することで血圧を測っています。
しかし、スマートウォッチで測定しようとすると同じような仕組みでは難しい、
そこで、スマートウォッチでは緑色発光ダイオードと、
その反射を測定するための感光性ダイオードを利用しています。
仕組みはとてもシンプルです。
緑色発光ダイオードで発光させた光が腕に当たり、
血管から反射した光を、感光性フォトダイオードで計測することにより、
このデータをもとに独自の測定結果を出しています。
これでも謎ですよね。「血管に光を当ててどうするのか?」と思うかもしれません。
なぜ、発光ダイオードの光と受信器で血圧がわかるのでしょうか?
実は血圧そのものをこの仕組みで測定することはできません。
あくまで「脈拍」を測定した上で「血圧」を計算しています。
それでは、脈拍はどうやって測定するのでしょうか?
血液の原理を使った光学的な計算で脈拍を測定
皆さんご存知の通り血液は普段赤く見えますよね。これは血液が光の中の赤色を吸収しているからです。反対に血液は緑色を反射する性質があります。
この原則に従えば、脈拍を打った時には当然大量の血液が流れます。そこで、光を当ててその反射を計測していると脈拍を打つごとに色が変化すると言えます。
この色の変化を捉えることで脈拍を測ることができていたというわけです。
しかし、ここから血圧を計算するには別のアルゴリズムが必要です。
Apple Watchも血圧測定の特許を取得している
血圧測定のためのアルゴリズムにまだ正解はない
別のアルゴリズムについて残念ながら正解というものはありません。
2019年1月の現時点でApple Watchを始めとした高価なスマートウォッチであっても、
脈拍数測定機能しか搭載されていないのは、
この脈拍から血圧を正確に推定することは難しいからだと考えられます。
格安スマートウォッチの多くが血圧測定機能を搭載しているにもかかわらず、
アップルがまだApple Watchにその機能を搭載していない。
それはさすがにアップルも精度が十分に高くないにもかかわらず、
堂々と「血圧測定ができます!」とは言えないという事実があるのではないでしょうか。
しかしながら、世界には簡単に血圧測定ができる技術は開発されつつあります。
例えば福岡工業大学の山越健弘准教授らによる研究において、
血圧測定をスマートフォンのライトとカメラで正確に行う研究論文を発表しています。
一方で、現時点で製品化には至っていないのですね。
精度や価格の問題が課題として残っているようです。
福岡工業大学―[情報システム工学科]山越准教授の研究論文がNature Publishing GroupのScientific Reportsに掲載されました(和訳)スマートフォンのみを利用したカフレス血圧の推定
http://www.fit.ac.jp/sp/news/archives/2509
スマートウォッチを使った血圧測定の精度はどのくらい?
なぜスマートウォッチで血圧を測るのは難しいか
血圧はそもそもに変動しやすい数値だということが挙げられます。
血圧測定時は、安静時に腕の位置を心臓と同じ高さにして計測することが重要です。
スマートウォッチを装着しているような外出時や活動時に、
思いつきで血圧測定をしても万全の状態ではないことが多いでしょうから、
あくまでスマートウォッチによる計測は簡易的なものになります。
おそらく、医学的にはスマートウォッチで血圧測定ができるようになったとしても、
安静な環境でしっかりと測定できる状況でしっかりやらなければ、
あまりデータとしては意味がないと思います。
血圧測定は腕の位置で大きく測定結果が変化してしまう
血圧は腕の位置によって大きく変化してしまいます。
そのことを実証した研究をご紹介しましょう。
この研究では腕の位置を1メートルあげた状態で測定した場合は、
血圧が77mmHg低下し、逆に腕の位置を下げれば、
血圧は77mmHg上昇するとしています。
そこで、腕の高さの変化を考慮した補正を入れた場合で最大血圧、
最低血圧において8.9mmHgの差を低減することができたと報告されています。
腕の位置がきちんと決められているのはこういう背景があるのです。
ということはスマートウォッチを付けているから、
「血圧も安定して測れる」ということにはならないのです。
平成28年度 戦略的基盤技術高度化・連携支援事業
戦略的基盤技術高度化支援事業「腕時計型連続血圧測定システム開発」研究開発成果等報告書
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/portal/seika/2014/0334h.pdf
ウェアラブルデバイスを使った血圧の誤差が問題
この研究ではまたウェアラブルデバイスでの血圧測定は、
最善の場合でもおおよそ1割程度の誤差がでる可能性があることも示しています。
まだまだ血圧測定をスマートウォッチで実装するのは難しいのですね。
現時点では、スマートウォッチを用いた血圧測定には課題がたくさんあります。
しかし、それを解決するための技術開発は進んでいる事もわかりました。
血圧測定の正しいやり方
一般的な血圧測定の方法でスマートウォッチでも測ろう
ここで少し趣をかえて、一般的な血圧測定の方法についてご紹介します。
血圧は体の調子によって敏感に変化します。そのため、普段と違う緊張した環境では数値が変動します。そこで、血圧測定をする際には必ず以下の点を守ります。
- リラックスした状態で測定すること
- 座って計測すること
- 同じ姿勢で計測すること
- トイレを我慢しないこと
結構守らなくてはならないことが多いのが血圧測定の欠点ですね。
しかしながら、ウェアラブルデバイスでも計測できる日が来ると良いですよね。
なぜ今後スマートウォッチによる血圧測定が必要か
スマートウォッチはメガネのように普段から身につけるものです。
そのため、センシングを行うことで日常的な健康状態を記録することができます。
心筋梗塞や脳卒中などの原因は血圧の急激な変化によるものが指摘されていますので、
普段から自分の体調を把握しておくことが大切です。
例えば血圧が急激に変化した時をアラートしてくれるスマートウォッチがあったら、
「あまり怒らないようにしよう」とか「ちょっと一息入れよう」とか、
それぞれの性格に合わせて、体調を管理することができますよね。
予防医学としてスマートウォッチを有効活用した健康的な生活を実現することは、
高齢者社会で医療費負担の大きい日本にとっては必要な製品なのではないでしょうか。
そしてIoTとして身体から得た情報をかかりつけ医に送信したり、
AI医師のアドバイスを受けたり、最適なトレーニングプランを提案してくれたり、
食事の提案をしてくれる、そんな未来につながると良いですよね。
おすすめの血圧測定が正確なスマートウォッチはあるの?
オムロンから医療機器として血圧測定ができるスマートウォッチが登場
実は、現時点では日本で市販されているスマートウォッチで、
医療機器レベルに高精度の血圧測定ができるスマートウォッチはありません。
オムロンヘルスケアの開発している、スマートウォッチ型血圧計「Heart Guide」は、米国食品医薬品局(FDA)の認可を取得しているので高精度で測定が可能です。
ただし、このオムロンヘルスケアの技術は光センサによるものではなく、
通常の空気圧縮による血圧測定の方法を時計型にしたものです。
価格は499ドル(約5万円)で米国で先行発売されます。
現在は手に入れることができませんが、現時点ではスマートウォッチでかつ、
医療用機器の認証を受けている製品はこれだけなので注目です!
2019年3月24日にこのOmron HeartGuideについて、
今手に入るあらゆる情報をまとめた記事を公開しました。ぜひ御覧ください。
Amazonで販売されている安いスマートウォッチで血圧測定してみた
まだまだ医療機器としてのスマートウォッチは値段が高いですよね。
だいたいでいいから血圧測定をスマートウォッチでしてみたいという方は、
数千円の中国メーカーのスマートウォッチをおすすめします。
確かのそのとおりなのですが参考程度にはなります。
実際にアマゾンでは3千円程度で購入できる、
「Semiro V10」という格安スマートウォッチで血圧測定の検証をしてみました。
その結果、スマートウォッチで正しい血圧は測れたのか…
続きはぜひこちらの記事を御覧ください!